<シニア・ピア・カウンセリング> 約30年前に、米国カリフォルニア州サンタモニカの福祉センターがカウンセリング手法として実践し始めて広がった。高齢者の心の悩みや不安を同じ高齢者が聴くことで、大きな効果をねらう。ただ、専門の資格を持つ臨床心理士やソーシャルワーカーと違って、正式なカウンセリングはできないため、専門家の助言を受けながらのボランティア活動が中心になる。ピアは「仲間」の意味。ピア・カウンセリングは同じような社会経験や生活歴を持つ人どうしで行なう相談活動のことで、歴史は古い。日本でもアルコール依存症を目指すグループなどで取り組んでいる。 <鈴木絹英さんにインタビュー> 高齢者の悩みに同世代のカウンセラーがボランティアで相談に当たる「シニア・ピア・カウンセリング」。2年前からカウンセラーの養成講座を開いています。2001年9月現在で、修了生は500人にまで達しました。 環境分野の市民団体で働いていた約10年前、「これからの高齢社会に仲間づくりは欠かせない」と、元気な中高年向けサークル「ハミング倶楽部」をスタートしました。その活動の傍ら、高齢者向けの悩み電話相談をしている時に、多くの相談者の「さびしい」という訴えに、60歳代のスタッフたちがその孤独を自分のことのように受け止め、共感している姿を見て、シニアが高齢者の話相手になって心のケアをすることができないかと考えるようになったのです。そんな時に米国の「シニア・ピア・カウンセリング」を知り、「高齢者どうしが支え合う仕組み」に共感して、日本でも広めようと取り組み始めました。 65歳以上の高齢者だけの世帯は約624万世帯で、その内半数近くがひとり暮らしです。話相手がいない、地域とかかわりがないなどの理由による「閉じこもり」も問題になっています。人と話し、人と交流することが人を活性化させます。そして、ボランティアで話し相手になるひとにとっても誰かの役にたっているという生きがいを得られるのです。 愛する者を失った悲しみ、体力の衰えからくる将来への漠然とした不安など、同じ世代なら分かり合える悩みもあるはずです。高齢者の相談に応じるのは同じ時代背景を持つ人がふさわしいのではと考えて、いろいろと探してみましたが日本にはそのようなカウンセリングを実施しているところはありません。そんな中で、米国のカリフォルニア州のサンタモニカの医療センターでスタートした高齢者による高齢者のカウンセリングのボランティア活動をつづった資料を見つけたのです。その資料をベースに、齋藤利郎先生・武蔵野女子大学講師(臨床心理学専攻)にお願いして、日本版のシニア・ピア・カウンセラー養成講座のカリキュラムを作っていただきました。 第1回のシニア・ピア・カウンセラー養成講座には、資料請求が600件、受講の申込みが190人もあって、本当にびっくりしました。講座を開催する前にご相談させていただいた専門家の方々からは否定的な意見も多かっただけに、日本にもこれまでとは全く違う意識を持った高齢者の方々がたくさんいらっしゃるのだと感じ入ったのです。 受講者は40代から81歳までと幅広く、現役のヘルパーさんや、退職後のボランティア活動をしたいという方、親を介護している子どもさんなどです。自分が年をとった時に「お世話をされやすい人になるために」という動機の方もいました。 いろいろな参加の動機はありますが、基本は「人生経験さえあればできるボランティア」です。そして講習を通じて、「聴く」力をつけていくのです。 「相手の話を聴く」ということは「だんだん話していくうちに相手の持っている問題点、専門的に言うと主訴が出てくる」ということです。カウンセリングの基礎は「傾聴する」という基本姿勢を養うことです。私達は相手の話を良く聞いているつもりで、実は無意識に自分の都合の良いように聞いているのです。ですから「聞く」のではなく、「傾聴する」というのは、自分というものをすっぱりと横に置いて、相手の心に寄り添って聴くことです。この聴く技術を体得した修了生は日常生活でも、例えば家族とのコミュニケーションでも「とても良く話しを聴いてくれるようになった」と言われるような大変身をとげます。 修了生が老人施設などでのボランティア活動を希望している場合には、協会から推薦状をお作りして、お話し相手のボランティアを望んでいる施設に行っていただくこともありますが、どのような内容で活動をするかはご本人と施設の責任者のあいだの打ち合わせできちんととりきめていただいています。 カウンセリングという言葉に対して「心の病を持っている人に対して行なわれる心理療法」のように思われている方もいらっしゃいますので、「専門的な技術を身につけたお話相手のボランティア」とご紹介するようにしています。 最近はホームヘルパーの派遣会社から「ヘルパーと同行して彼らが作業をしている間、お客様の話し相手をしてもらえないか」といったご依頼をいただいたり、「近所のひとり暮らしのおばあちゃんの話し相手をしてもらえないか」といった個人の方からのご依頼も増えています。 「シニア・ピア・カウンセリング」とは 「元気な高齢者がカウンセリングの基本を学び、悩みを持つお年寄りの話し相手として相談にのる」というのがシニア・ピア・カウンセリングです。 「ピア」は仲間、同士という意味を持っています。同じ世代で、同じ時代を生きてきたからこそ分かり合える仲間意識があります。だから悩みを打ち明けるには、最適な相手になりうるのです。 お年寄りの最大の悩みは孤独(寂しさ)です。独居をしていれば、話をする機会も少なく、孤独になります。家族と同居していても、世代の違いがあれば、必ずしも、高齢者の悩みを理解してもらえるとは限りません。むしろ家族の中にいて、話が通じないで、よけいに孤独を感じるケースも多く見受けられます。 そこで、高齢者のピア・カウンセラーの役割が大事になってくるのです。 つまり、シニア・ピア・カウンセリングは、共通の社会的経験を持つ同世代の者が、相手の嘆きや悩みを「きちんと聴く」ことによって、相手の心の不安を軽減し、かつ、その人なりの判断や納得を促すという意味で、社会的にもとても重要なことなのです。 シニア・ピア・カウンセラーになるためには シニア・ピア・カウンセリングといっても、ただ、お年寄りの相手として、世間話、茶飲み話のお相手をするわけではありません。悩み、不安、問題を持つお年寄りの気持ちに沿って、心を傾けて「聴く」ことが何よりも大切になります。アドバイス、忠告をすることでも、諭すことでもありません。もちろん、適当に相づちを打っていてばよいというものでもありません。相手の立場に立って話を「聴く」ためには、それなりの訓練が必要です。また、高齢者の肉体、心理などについても基本的な知識が必要になります。 これらの点をふまえて作られたのが、シニア・ビア・カウンセラー養成講座のプログラムです。 シニア・ピア・カウンセリングはボランティア活動が基本 シニア・ピア・カンセラーのお仕事は基本的にボランティア活動であるとお考え下さい。金銭的な報酬はなくても、悩みを抱えるお年寄りの役に立ち、喜んでいただけるということに大きな意味があるのです。この活動はボランティアとしてカウンセリングをする高齢者にとっても、ご自身の生きがい作りに役立ちます。そして、こうした活動がご自身の免疫力を高め、健康になるという嬉しいデータも得られています。 シルバーセンター、デイケアセンター、老人ホーム、特養ホーム、病院、或いは個人のお宅に出かけてなど、活動の場はたくさんあります。 これからの日本は、高齢社会から超高齢社会へと進んで行きます。その時、高齢者は社会から扶助を受ける立場ではなく、社会を担う重要な一員として活躍していかなければなりません。シニア・ピア・カウンセラーはそのなかの最適な活動の場ではないでしょうか? 養成講座を受講されているのは必ずしも高齢者だけではありません。ホームヘルパーを始めとして老人介護のお仕事に携わる方々もレベルアップを目指して、たくさん受講されています。又、お身内のお年寄りのために受講される方もたくさんいます。 「シニア・ピア・カウンセラー養成講座」実施要領 (1)講座内容:全20コマ(45.5時間) ●ワークショップ(体験学習) 4コマ=8.0時間 カウンセリングの基礎の体験学習とそれを通して「自分を知る」 自分自身を知らずに、他者の相談にはあずかれません。
●講義 5コマ=10.0時間 高齢者自身の意識はどう変わっていくのか、加齢とは、あるいは うつや痴呆とは何かなどを総合的に学びます。 高齢者問題に関して第一人者である、大学や高齢者専門機関の 研究員の先生方から直に学びます。
●実習(ロールプレー:役割演技) 11コマ=27.5時間 11回 ロールプレーは日本語では役割演技と訳されます。講座の内で 最も重要な部分です。小人数のグループに分かれ、カウンセラー 役とクライアント(相談者)役の2名が各々の役を演じます。 この演技実習を通して、カウンセリングの基本である「傾聴」の 技法と技能を体験的に学びます。 |
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